こんばんは。きりちにです。
夕方から電波がつながりません。こんな日に限って珍しくお出かけしてしまった。いまは河川敷を何十分も歩いて帰宅している最中です。誰と連絡することもできず、さながら無人の砂漠に一人取り残されたような心持ちで、この文章を書いています。
橋の電灯に照らされて、私の影はみっつに分かれて長く長く伸びていきます。
普段通らないとはいえ、何回かは歩いたことのある河原です。なのにどうしてか、旅の途中のような感覚が拭えない。
思い返せば、引っ越してきたこの土地を心の底から自分のホームだと感じたことはないかもしれません。毎日寝起きする下宿だけれど、あくまで旅行者の仮住まいに過ぎない。
かといって、懐かしき地元の風景はもはや私のものではありません。自ら進んで出て行ったのですから。実家が引っ越したので、本当の意味でのふるさとはなくなってしまいました。
私という人間の座標は、どこにあるのでしょうか?
そうこうするうちに支流へ曲がって、ようやく少しだけ見慣れた風景になりました。同時に、私の気持ちにも変化が訪れています。
私の座標とは「ここ」でしかない。たとえ新天地に疎外感を覚え、郷愁に打ちひしがれる夜があろうと。ここからまっすぐ河原を歩いて、あの橋のたもとで左折すれば、その先に俺の住処がある。その確信があれば、きっと大丈夫に違いない。
出かけ先で結構飲んで、さらにコンビニで酎ハイを仕入れてから歩き始めたので、結構疲れているかもしれません。
川の対岸を、大きなトラックが光を撒き散らしながら南へ降りていきます。私は暗い川べりを無言で。
そうこうするうちに目的地の橋が見えてきました。あそこを曲がったら私は日常に戻ります。
自宅で電波がつながれば、この文をそのまま投稿することにしましょう。
残り数百メートルは、文字を書かずに歩きます。たまには一人でいたっていいのです。カレーパンを買っていたかな。
それでは。