枕元のデジタル時計に映った時刻、日付、温度、その瞬間のあらゆる数字を足し合わせて、和が9の倍数になるかどうかを判定する。刻一刻と変化する秒数に「あ、4秒後に9の倍数になるな」と思う。
17行1ページの小説を読み耽りながら、反対の脳で各行をmod4で仲間分けし、一番下まで文字の詰まっている行の数を数える。改行の少ない夏目漱石は初めから終わりまでボーナスタイム。
今日はそういう、誰もが生活の中で無意識にやっている算数あそびについて語りたい。
どうやら、俺しかやってないらしい。
すれ違う対向車のナンバープレートをフラッシュ暗算することも、壁のタイルの色に倍数の法則を発見することも、あるあるなんかじゃ全然なくて、俺の脳だけがそんな奇妙な裏側処理にワークスペースを割いているという。
思考の束は誰も等しく散らばったもので、時には大きな回線を占有するその処理をいかに御しながら本来の仕事に向き合うか、それこそが「集中」ということなのだと思っていたが、皆んなの思考は太い一本にまとまっていて、余計な遊びなどなしに目の前の関心事に100%の処理量を割けると、そういうことなのか?
ところで、そろそろ怒られそうだから大学に行こうと思う。