無目的に歩くことって、できるだろうか。
いや、理論上の話ではなく。今の自分の、モチベーションの話として。
夜中の住宅街に降りる。
明日の予定はなく、先の予想もない。どう過ごしたっていい、いつ帰ったって構いやしない、と思う。
そのまま歩き出す。コンビニがあるとか、後から帰って来やすいルートだとか、そういうのは抜きにして、風の吹くままに進路を取る。
そういうことができなくなった、って気づいたね。俺は。
いや、元からだったか?
せかせかするよね、なんとなく。
「あれ買っとかなきゃ」とか「三十分以内に帰ろう」とか、目的意識に追われて、早歩きする。
道端に新しい気づきを探す、そんなまなざしもすっかり忘れて、ひたすらにせかせかと。
夢の手枕に、不意に差し掛かった分かれ道の、知らない下り坂を選ぶ余裕を失くして、勝手知ったる道へ進んで現実へ戻る。
もう、ずっとそうなのだろうか。無目的に歩くことは、無いのだろうか。
くったり忘れてなんにゃらけ