287日目 同期娘8人真夜中旅

 

 

昨夜は高校同期らと会ってきました。その数なんと8名。同期ズのほぼ全員が一堂に会する、後にも先にも珍しい機会です。

いろいろと今後の土台になりそうな、濃密な時間を過ごしました。これは記録に残すべきだと、本能的なナニかが告げています。

 

マンションの一室を訪ねると、学生たちがすし詰めになって騒いでいました。まだ外も明るいというのに、人も揃わないうちからさっそく飲んでいるようです。私はほとんど口をつけず、スッと静かにしておりました。何やらよく分からない、安堵のようなものに満ちた、そんな心で。

 

まずは昨日の日記のタイトル通り、7人で連れだって銭湯へ行きました。

7人もいると歩道を行く隊列にクセが出てくるというか、大まかな関係性が見え隠れするような感じになります。かく言う私はというと、前に行ったり後ろに行ったり、誰かの隣になったかと思えば、一人だけ余ったりして。これという定位置がない。なんだか、中学高校時代の自分の立場が思い出されます。ほとんどの同級生にとって、私という人物は「よく分からない無害な人」でしかなかった(と、自分では思っている)。

さて浴場にて、ゆっくりと時間をかけて体を洗い、タオルを持って移動しますと、連中が今度は湯船にぎゅうぎゅうに詰まっていました。このへん、リアルな男子学生で想像するとたいへんむさ苦しいので、いつもの「高校同期娘ズ」で代用していただければと思います。

別の湯船を見ますと、ゆったりした空間にペンタブちゃんが一人浸かっていたので、隣に(正面だったかな)腰を下ろしました。彼は近頃ほとんど交流が無かった人物の一人です。何を訊いたものか分からず、前菜として「就活してんだっけ?」と切り出しました。今から宴を楽しもうというときに、これは悪手だったと思います。しかし、ペンタブちゃんは気にしていない風でした。なんとなく、この不器用な感じがみんなに共通していて、だからこそこの集団は居心地がいいのだと思い出しました。

 

マンションに戻りましたら、いよいよ夜の始まりです。ピザと酒を酌み交わして、めいめいぎゃあぎゃあと騒いでいます。こんな人数で話がまとまるはずもなく、あっちでガヤガヤ、こっちでバヤバヤという感じ。

やっぱね~、エネルギーを感じますよね。誰も彼も俺も、みんな口を揃えたように「おっさんになっちまったわ~」「体力ないわ~」って言ってるけど、いうても大学生ですからね。めいっぱい夜を騒ぎつくしてやろうという気概がひしひしと伝わってくるんですよ。イェトチャンら愉快な話し手たちの熱気に当てられて、私もついつい饒舌になるというものです。暑すぎるのでエアコンをつけてもらいました。

ちなみに、家主であるオイスたんは終始そわそわしていました。いや、分かる。よく分かるわその気持ち。こんなやかましくて不衛生な会合、仮に俺んちでやるとなったらマジで抵抗感あるから。立地がちょうど良いということで快く受け入れてくれた幹事に、我々は感謝を忘れてはいけないよ。

そのうちに誰からともなく言い出して、ポーカーが始まりました。最近ちょっと流行っているのです。しかし、ここで白状させてください。実は私、初回のハイカードでこってり搾られて以降、全くやる気がありませんでした。酒飲みが配って酒飲みが賭ける酒飲みのポーカー、あまりにグダグダすぎてカスなのよ。

ツモちゃんも参戦して(明日のために飲まないでおくそうです。Boo)、いよいよメンツは8人に。もう屋内じゃ収拾がつかなくなってきましたので、同期娘たちはぞろぞろと真夜中の散歩へ繰り出しました。

 

ビル街の狭間にひっそりと存在する緑地公園。噴水の傍に腰かけて、なんとなくのお喋りが始まりました。コンビニで買った酒やなんやを、めいめいに飲みながら。私は日本酒のビンを開封して一生ぺろぺろしていました。バカです。

いかに仲良しの同期ズとて、決して一枚岩ではない。例えば異性絡みの話なんかで、いろいろ語れる奴・語れない(あるいは語る気がない)奴という明確な区分が存在します。まあ疎外感とかは全然ないんだけどね。人の数だけ立場があるのは当然のことさ。

っつーわけで私は「そういう話」が無い連中と固まって、政治や進路のことについてしばし語り合いました。俺もお前も根が真面目なんだろな。酔っぱらったときに出てくる話題が妙に真剣で、根暗で……そういうところにも、また親近感を感じるのよ。

ところで、クソシンダンスキーさんが忽然と行方不明になりまして、みんな(産毛程度に)心配したのですけれど。ちょうど探しに行った奴らと入れ替わりで、ケロっと戻ってきました。ブランコを漕いできたそうです。なかなかやるね。

 

夜も深まってきたので、ぐるっと公園を歩き回って見ましょうかね。ふらふらと軽い足取りで、同期娘たちが木々の間を抜けていきます。

道中で遊具を見つけては、俺も俺も! という感じで遊び始める男たち。まるで童心に返ったかのように……でもないな? むしろ「この年で鉄骨渡りはマジで死ぬわ」とか「逆上がりなんかできるわけねえだろ」とか、成人としての自覚がありすぎているくらいでした。ちなみに、逆上がりは意外とできます。

私も多少気分がよくてですね。無暗に遊具の上に登って、謎にポーズを取ったりしていました。なお、撮ってもらった写真にことごとくクソシンダンスキーさんが混入していて、たいへん下品なポーズをとっておられたので、後から嫌な気持ちになったということをご報告しておきます。こいつ酒じゃなくてコーラ飲んでたのにこれなんだぜ。ヤバすぎだろ。

一旦大通りに出てアルコールを補充し、また公園を歩き始めたわけですが。ここに来て、連日の徹夜ですっかりボロボロのマッドジャグラー姉貴あたりが、限界に達して座り込んでしまいました。比較的元気だった私やカナらは、彼女らを置いてさらに奥を散策することに。

 

その瞬間は、はっきりとした自覚をもって訪れました。ついに来たのです。私にスイッチが入る瞬間が。

「わりい。あとの良心はお前に任せた」

オイスたんにそう告げるなり私は、カナが手渡した柑橘チューハイをぐびりと飲んで、一気呵成に走り出しました。帽子を高く放り投げ、拾ったボールを蹴り飛ばし、あっちへこっちへの大暴れ。なんとなく「ああ、こいつもバカだったか……」という呆れの視線を感じますが、今さらです。私はこれになりたかったんです。

なんつーかさ、普段ずっと一人で生活してる俺なんかは、当然、アルコールを盛大にやって大騒ぎすることも滅多になくてさ。たくさんの連中と一緒にいるときなら、安心していっぱい飲んで、どんどん加速できる……そう思うと、もうぐいぐい行きたくてたまらなくなったわけよ。

「ひひひ。はははは!」

急に足取りが危うくなってきたところへ、カナがさらにチューハイをプッシュします(もしかしたら私の方から要求したかもしれません)。ほろよいのわんこそばみたいになって非常に愉快でした。走って歩いて飛び跳ねて、もう最高ですよ。でも寝っ転がりはしませんでした。土塗れになって帰ったら、部屋を貸してくれたオイスたんに迷惑がかかるからね。

最後はクソシンダンスキーの先導で丘の上へと登っていって、高台のベンチに寝っ転がって自撮りをしました。あやふやな手からつるっとスマホが滑り落ちて、顔面にごつんとぶつかりました。

 

そこからどうなったのかはあまり記憶にありません。途中コンビニに寄ってバーガーを買い、それが非常に不味かった(温めなかったから)のは覚えています。あとは部屋に戻るなり、あっという間に眠りに落ちたのかな? まあ、こんだけいろいろ思い出して書けてるんだし、意外と酔ってなかった説もあるかもしれない。

 

翌朝、マオが目覚めると、カナが隣ですうすうと眠っていました。家主のオイスたんはベッドの上で丸まっています。足元ではジャグラー姉貴がびしょ濡れ。あとの連中は、いつの間にか帰ってしまったようでした。

解散するときはほんとうにあっという間なんだから……。気まますぎる仲間たちのことを思って、マオはくすっと笑いました。そして再び、泥のような眠りの中へと戻っていきました。