551日目 【書評】「嫌味」と「皮肉」の心理学

 

 

うわ〜〜〜。

オフチョベットしたテフマブガッドしてリットを作ってる〜〜〜。

 

ロジャー・クルーズおよび二人の翻訳家による本書『「嫌味」と「皮肉」の心理学』は、アイロニー(=皮肉)とサーカズム(=嫌味)という修辞技法をより深く理解するための言語学的試みを解説した本です、たぶん。「たぶん」と付け足したのは、よく分からんからです。

 

そもそもまず、表紙をご覧下さいよ。「嫌味な人と皮肉屋の秘密を言語学と心理学で明かす」と書かれているからには、隣の嫌味なおばちゃんは一体どんなメンタリティからイジワルを言ってくるのかとか、そういうゴシップでメカニズム的な話が展開されると思うでしょう? ところが、本書の第1章の頭を読んでみますと……。

「人はアイロニーやサーカズムを使って、文字どおりの意味ではないことを言おうとします。学者のあいだでは、この「文字どおり」という用語の意味についても議論がありますが、ここでは単純で直接的、曖昧さのない言葉と定義するくらいで十分でしょう」

うぎゃ~~~~~~。来たよ。まず定義の話から入るタイプの本だ。ある種の由緒正しさを内包する、信頼性を感じさせる書きぶり。そう、この本は素人向けの「オモシロ科学読本」ではなく、ナマの心理学の論文をそのまま翻訳したような、言わば「ガチ」の本だったのです。

著者はこの後、アイロニーを7つの区分に分けて論じたり、サーカズムを成立させる条件について先行研究を紹介したりと、終始専門家らしいペースで論を進めていきます。私は3、4回に分けて読破に挑みましたが、3、4回全てで寝落ちしました。こんなにも目が滑るほど難しい内容を一般書のように偽装して売り出すなんて、全く何という素晴らしい本なのでしょう!

 

……とまあ、このように長い段落を書きましたところで。ここで改めて、段落の中身を確認してみましょう。

まず、一番最後の「全く何という素晴らしい本なのでしょう!」が、明らかに嫌味っぽい意図を込めて書かれた文であることはお分かりかと思います。

しかし、例えば中ほどの「ある種の由緒正しさを内包する、信頼性を感じさせる書きぶり」という文も皮肉のつもりで書いているとしたら、どうでしょう?

ある人は「そうだと思っていたよ。本の内容を無理に肯定して見せることで、かえって胡散臭さをアピールしているんだろう」と理解を示すでしょう。一方で、ある人は「これが皮肉だと分かるわけがない。単に訳者の書きぶりを讃えているだけではないか」と否定するでしょう。

このように、皮肉や嫌味というものには「それが皮肉だと判断されるか否かの線引き」や個人による受け取り方の差があるわけです。皮肉や嫌味という修辞技法に特有の曖昧さをどのように捉え、どのように定義するか。そんな興味に憑りつかれた学者たちの足跡を記録したのが、まさしく本書の功績であると言えるわけですね。

 

いや~、さすがはニュートン新書! ご立派でありますこと!