102日目 血管に流れるリズム

 

とりとめのない雑談をひとつ。

 

音楽の経験がある人って、何かにつけて持て囃されがち。

上手い音ゲーマーが実は楽器経験者だと知ったとき「なるほどね~」となったり、カラオケのメンツに元合唱部がいると「いよっ! お願いします!」と声を掛けたくなったりします。

でも実際のところ、ひとことに音楽と言ってもそのジャンルは多種多様で、磨かれるスキルも十人十色。一律に「音楽経験者はやっぱりすごいね」という評価を下すのは難しいような気がするんです。むしろ、一人一人のスタイルの違いを見ていくのが面白いですよね。

 

例えば私の友人に、高校時代合唱をやっていた人がいます。彼の歌声ののびやかなことといったら、聞き惚れるあまり鼓膜が破れるほどです。

当然彼はカラオケも上手い。中島みゆきあたりのカッコいい曲を、ルームじゅうに響きわたる素晴らしい声色で絶唱します。

しかしながら、合唱の発声のしかたはあくまで「合唱の発声のしかた」です。彼はときにアイドルソングを歌うこともあるのですが、もちろん一般人の私なんかよりはめちゃくちゃ上手くて高得点が出るのだけれど、アイドルちゃんのポップさを再現できているかといわれれば答えは否です。キャピキャピソングが分厚く熱唱される、なかなかの異空間。

それでまあ、当人はもちろん自分のスタイルが合ってないことを理解したうえで歌ってるわけだけど、どうしても我々未経験者は「本物かと思ったッ! やっぱり合唱部は上手いッ!」と褒めたたえてしまうわけなんですね。どう考えても初音ミクの声は出ていないのにね。

別にそれが悪いということではなくて、当人らが「このジャンルだと関係ないんだけどなァ……(照)」ってなってたとしたら面白いねって話です。逆に、バンドのボーカルをやってた人に演歌を歌わせてみたい。

 

音ゲーの世界でも、ひとことに楽器経験者といっても全然スタンスが違うわね、な事象が起こりますね。プレイの上手さだけではなくて、好きな譜面の系統とか、自分で譜面を作るときの個性とか。

……とかいって書き始めましたけど、そもそも私はあんまり他人のスタイルを鋭く分析できるタイプじゃないんだった。お恥ずかしながら、自分自身の話をしようと思います。

 

私はピアノを8年、ドラムを2年やっていました。といっても、習い事として週一で教室に通う以外はマトモに練習しなかったので、アマレベルにすら届いてないんですけどね。

ピアノの大きな特徴は、指の一本一本が独立していて流れるように演奏すること。それから、右手と左手で全く異なるリズムを叩いて、メロディもベースも一人で完結させなければならないこと。つまり、音ゲーでいうところの「階段トリル」と「混フレ」ですね。

一方ドラムの方はというと、こちらはメロディラインとは無縁で、とにかく固定のリズムを刻み続けることが仕事です。また、多くの曲で似たようなパターンが共有されているのも特徴。4拍子あるうちの2と4でスネアを叩くとか、ウラ拍でハイハットを擦り続けるとか、ラストの4小節めだけアドリブでリズムを変えるとか……。ちなみに、固定のパターンが多いということは、曲の中で同じ動きを繰り返すことが多いということでもあります。

 

さて、世の中の音ゲー譜面を見てみましょう。例えば、左手で4拍を打ちながら右手で複雑なリズムを取る混フレ+トリル譜面。すっげえピアノっぽいな~と思っちゃうんですよね。右手で伴奏・左手でメロディのパターンをあんまり見ないのも、まさに生のピアノという感じ。だって、ピアノは絶対に左側のほうが低い音なんだもん。ちなみにそのせいで、元楽器に忠実な音ゲーほど、左利きへの配慮は無くなりがち。

それから、メロディを取らず固定のリズムを取り続けるパート。……まあこれ自体はよくあると思うんだけど、たまに「特定のキック音を必ず同じボタンに割り当てている」譜面があると、あ! ドラムじゃん! となっちゃう。ドラムセットは同じ太鼓を叩けば同じ音が鳴る楽器で、強い音でキメたいときには必ず同じところをブッ叩くということが習慣化されているのだ。えっへん。

 

つーわけで、そういうわけです。はい。

タイムラインを見ていると、DEEMO経験者(=ピアノ経験者に近い)がやたらとメロディを一音残らず拾い上げたがったりとか、和太鼓経験者(というよりタイタツ経験者?)が固定レーンでの左右交互および縦連を好んだりとかしてるみたいです。各人が経てきた音楽体験が、それぞれの血管に流れるリズムを個性的なものにしているわけなんですね。

 

いや、見当違いの分析をしているかもしれないし、特に結論は無いんですけどね。一度セッションとかしてみたいね(明後日の方向のまとめ)。