941日目 ワイヤレスイヤホンとかいう難しい買い物

 

完全ワイヤレスイヤホンが好きです。サッとケースから取り出してパッと耳に押し込むだけ。わずらわしいヒモも何もない、この快適感は代えがたい。愛機はSONYの WF-XB700 です。この裏路地をのそのそ歩く人々の中で、俺が一番イイ重低音を聴いている。

けれども、ファンでありながら哀しいかな、ワイヤレスイヤホンは不満足な買い物になってしまうことが多い。最大の理由は、快適性を大きく左右する要素にも関わらず、ネット上のイヤホンレビューで言及されない項目がいくつもあること。イヤホンレビューと言えば、高音・低音のバランスや聞こえのクリアさなど、どうしてもオーディオとしての性能ばかりが論じられがち。真に重要な項目は他にもたくさんあるのに、そういった部分はレビューの中に顕れづらいので、いざ現物が届いてから「こんなつもりじゃなかった」と後悔することになる。

 

マイク音質

マイクの質が良いかどうかは、買ってみるまで本当に分からない。聞く側に関してはみな饒舌に語るのに、話す側については「たぶん悪くない」「問題ない」などと曖昧だ。評価件数が少ないせいで、参考にできる指標がない。直感を信じて買ってみて、初めて通話するときに「なに? 聞こえなーい」と言われ、失敗を悟る。

ホワイトノイズ

小さな声や音楽の後ろで鳴っている、サーッ……というさざ波のようなノイズ。実はメーカーや機種によってかなり差が出る項目なのだが、これを比較して良し悪しを示してくれるサイトはない。うちの愛機もホワイトノイズが弱点で、例えば布団で目を瞑りながら焚き火の音を聴いていたいとき、かすかな音量のゆらめきを感じていたくても、ノイズが一定の音量で頭の中を乱し続ける。

アナウンスガイド

アナウンスガイドの音量が無暗にデカい機種がある。充電が切れかけて来ると突如「Low Battery」と爆音で叫ぶ。それが怖くて、ビクビクしながら使う羽目になる。それから、アナウンスには英語と日本語、さらには中国語の可能性がある。馴染みの浅い言語でペラペラと喋られるのは不快なものがある。

 

こうした細かな、しかし体験の質の担保に不可欠な要素を、余すことなくコンプリートしている機種はなかなか見つからない。仮にあるのだとしても、買ってみなければ分からない。低価格帯だとほとんど確実にハズレを引く。しかし高価格帯のガチャを回すのは怖い。

知人に意見を募っても、感覚的な好みの話は十人十色。まして用途も違えば、求める正解も異なってくる。「これにしとけば正解」という統一見解が全く見当たらない。だから、最後は自分の直感を信じて買ってみるしかないし、失敗を引いてしまいストレスを抱える羽目になる可能性は決して低くない。だから難しい。

ああ、ワイヤレスイヤホンとかいう難しい買い物。