782日目 さんきゅちあり

 

階段を降りてエントランスを出ると、ビジネス街の空には夜が降りてきていた。日が短くなっていくということ。ああ、冬! かすかに冬への期待を起こさせる、まだまだ暑い九月の暮れ。

ぜんたい僕は、夏より冬の方が好きだ。その年初めての冷たい風が僕の体を撫ぜたとき、えも言われぬエモが胸元にゆんゆんと溶け出る。しんと冷えた空気の中を、厚くやわらかなパーカーに包まれて歩く夜道。掻き立てられる官能的な情感。孤独に耽るという愉快な遊び。

そんな素敵な冬の訪れを心の中で期待しながら、かかる十月の夏の残滓へ僕は歩みを進める。君もそうだろうか?

 

さあ、まもなく電車は駅に着く。