422日目 風呂ノリッキー

 

久々に風呂を溜めて入った。1Kのアパートの汚い湯船で疲れなんか取れないが、まあ気まぐれだ。

浸かるからには清潔でありたい。汗と老廃物の水溶液に身を沈めるのはごめんだ。だからまずは普通にシャワーを浴びて、一旦体を拭きつつ湯を張り、改めて再入浴するという手順にした。ゲン担ぎ的なことばかり気にするので、無暗に効率が悪い。まあ、ウマ娘コパノリッキーちゃんが入浴しているイメージでお願い申し上げる。

普段は40℃のシャワーを浴びているが、溜めるときも40℃でちょうどいいのだろうか。あっという間に冷えてしまいやしないか。加減が分からないから41℃にする。

 

余談だが、僕はなんでも2とか4とかのキレイな倍数にしないと気持ちが悪い。スマホやテレビの音量は必ず2刻みで変える。パソコンの音量は最大100と大きいので、必ず10刻みで変えることにしている。美しい倍数だと清々しいのだ。そういうわけで、本当は40℃か42℃のどちらかにしたかったのだが、あんまり熱いと翌日のレースに関わるので間を取って41℃とした。素数なので据わりは良くない。

 

さて、目視で適当に湯を止めて、ゆっくりと湯船に足を入れる。うん、心地よい温度だ。そのまま肩まで浸かる。首を回すとパキパキとなる。やはり、多少は血行を良くする作用があるのか。

ここで一旦体を起こし、風呂場の引き戸の方をチラリと見た。予め缶チューハイを置いておいたのだ。体にはさぞかし悪かろうと思うが、湯浴みしながら酒を飲むというお巫山戯もたまには良かろう。ぐいっと一口やってコッパッパ、というわけだ。

湯気の立つ水面に、艶めかしい肢体が揺らめく。美人の入浴酒というのは東方なんかでたびたび描かれる光景で、非常に憧れがある。山奥の秘湯で、大きな盃に日本酒というのが一番いい。背の高く凛とした女性が複数人で飲んでいるとなれば、尚よい。

 

だが、僕はついぞ缶チューハイに口をつけることは無かった。すごすごと湯に浸かりなおす。そもそも僕は美人ならず、ここは知る人ぞ知る温泉でもない。小汚い成人男性一名が、誰も知りようのないアパートの一室でぺたりと尻をつけて座っているだけだ。こんなところにロマンなんてものは生まれやしない。

そのうち、黙って風呂に入っているのが無性に退屈になってきた。たかだか数分しか経っていないのに、さっさと出てしまいたいと感じる。銭湯や温泉旅館なんかに行くと分かるが、風呂というものはのぼせてしまって逆に疲れたり、かえって汗をかいてしまい不快になるものだ。よっぽどシャワーの方が爽快感がある。

考えているうちに、やたらとタイルのカビが目についてくる。もはや心が休まらなくなったので、さっさと上がることにした。栓を抜くと大量のお湯が流れ始め、排水溝に事前に垂らしておいたヌメリ取りの薬剤を洗い落としていく。案外効率が悪くない人間だということもあり得るか。

 

Mリーグの開幕、オリックスの優勝、村上の56号、夏休み終了の所感、何ひとつ始まっていない卒論への焦り、人間性のコンプレックス、社会に関しての悩み……。

書こうと思っていたことがいろいろあるが、いちいち触れるときりがないので今日はこれだけにしておく。