411日目 アライバ

 

しばらく酒が飲めなくなるので、今宵は一人で晩酌していました。何の気もなしに、Youtubeを見ながら。

アスリートのYoutuberデビューが普通になってきた昨今。プロ野球の世界からも、OBの選手たちが続々と登場しています。彼らが現役のベテランとしてプレーしていたのは、10~15年前。そう、ちょうど私がプロ野球を知り、プロ野球に憧れ始めた頃のスターたちだったのです。

コンビニのサラダをつつき、飲めたもんじゃない酎ハイを舐めながら、スターたち——といっても今ではおっさんたちだが——の回顧話に耳を傾けていました。そうするうちに、ふと思いつくことがあって、私は検索窓にある言葉を打ち込みました。

「アライバ」と。

 

プロ野球セントラル・リーグの球団、中日ドラゴンズ。今でこそ最下位争いの常連のようなイメージがあるけれど、私が少年の頃は球界に名を轟かすストイックな強豪球団でした。2007年には日本一にもなったのです。

当時のドラゴンズの売りは、やはり堅守。抜群の投手力と鉄壁の守備で相手に得点を与えず、僅差で圧勝する野球。特に、セカンドの荒木とショートの井端のコンビは「アライバ」と呼ばれ崇拝されていました。

 

当時の動画が検索に引っ掛かりました。恐る恐るクリックすると、わずかな読み込み時間ののち、粗くも鮮烈な映像が流れ始めました……。

 

youtu.be

 

そう、これ。これなんだよ、プロ野球ってのは。

 

誰に向かってでもなく、私は胸の中で呟きました。酔っているからか、目頭が熱くなりました。

野球の華はホームラン。けれども、本当の技は守備のファインプレーに宿るのです。何故なら、私が憧れたのはアライバだったから。熟練の二遊間にしか生み出せない、それまでもそれ以後も見ることのできない神業を、二人はやってのけたのだから。

当時同じく中日の野球に見とれていた少年……そう、例えばオイスたんなんかも、プロ野球の華は何かと問われれば守備だと答えるでしょう。答えなくても、私が言わせる。口をこじ開けてでも言わせる。それくらい、アライバのプレーは懐かしく、今でも輝いて見えるのでした。

 

一人飲みなんてことをやっていると、時間はぐんぐん進み、気分はどんどん落ち込んでいきます。

このまま飲んでいたら、さらにさらに昔の映像を漁り続けて、このまま飛び込んでしまいそう。そうなる前に、今夜はもうYoutubeを閉じて、さっさと風呂に入って寝てしまいましょう。