351日目 外で、脱ぐ。

 

概要図 *1

いつの日からか、出かけるときにはキャップを被るのが当たり前になりました。思いつく限り、今年に入ってから外出時にキャップを被らなかったことは、一度としてない。ゼロです。

見渡す限り、これほどまで帽子に執着している知り合いはほとんどいません。どころか、この一年で一度も帽子を身に着けていない、そんな人すらいるのではないでしょうか。

では、なぜ私はキャップにこだわり始めたのか? ……それは、おおよそカッコいい理由からではありません。端的に言えば、寝癖をごまかすためでしかなかったのです。「人からどう見られているか気になるが、より良く見せるための努力はしたくない」——そんなズボラな性格が生みだした、最もインスタントな身だしなみの手法でした。

単純な動機から始めた習慣。しかし、いつからかそれが大きな意味を持つようになっていきます。どんなにふざけた格好でも、帽子を被れば「ちゃんとコーディネートしました」感が出せる。他の人と差別化されて、自分のカラーになっていく。そして何より、この帽子はシンデレラのティアラと同じ。お出かけの勇気をくれるおまじないなのです。

冬はブラウンでくっきりと、夏はベージュで明るく。2色のキャップが、私にとって無くてはならないものになりました。大学でもマックでも、役所でもマックでも、キャップはいつだってこの頭に。

 

それが……どうしたことでしょう。

今日の夕方、私は何も被らずに扉を開けました。まるでいつもと変わらぬ表情で階段を降り、自転車で車道へと漕ぎ出していきます。夏の喧噪に、裸髪を晒して。

坂を下りていく私の髪を、重い風が持ち上げます。

あるべきものがないという不安。湧きあがったちょっぴりの冒険心が払う、重い代償。一年越しのおまじないを捨て去った私の頭に、衆人の視線が一斉に降り注ぐ。恥辱。破廉恥。

外で、脱ぐ。外で、裸になる。

ちりちりと焼き付くような厳しい日差しに、今にも焦げて、焦がれそうな私の髪。インモラルな倒錯に溺れていくかのように、自転車は谷の底へ底へと下って行きました。

 

……だなんてことは、私にはどうでも良かったのです。

 

 

 

あ゛ぁ゛ぁ゛ぢぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛。

あ゛っ゛っ゛っ゛っ゛づ゛ず゛ぎ゛。

な゛に゛?゛?゛?゛?゛?゛? あ゛づ゛!゛?゛!゛?゛!゛?゛

ぼ゛う゛じ゛ど゛が゛ど゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛で゛も゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛。

あ゛ぢ゛ぃ゛も゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛。も゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛。

 

 

 

マジで本当に、帽子のこととかどうでも良かった。敢えて被らずに出てきたことなんか、もう完全に忘れてた。

本当に暑いのね、夏って。クーラーの効いた部屋に寝起きしているとついつい忘れちゃうけど、日本の夏ってこんなにイカれてるのよね、元来。

風すらも熱気を孕む、七月末の「本気」に中てられて、私の脳は完全に溶けました。焦点の定まらない据わった瞳で天を仰ぎながら、アへ顔の男は蜃気楼の向こうへと消えていきました。オタク特有の速漕ぎで。

 

……こう考えると、別にオシャレとかそういうことは関係なく、健康対策のために帽子は被った方がいいな。

皆さんも良ければ帽子にチャレンジしてみませんか? 気楽にキメたければキャップ。アダルトな香りを出したければハットもいいかもしれません。それから、私はどうあがいてもキノピオになっちゃうので諦めましたが、どんぐりのように小柄な愛らしさが出せる人にはぜひ、キャスケットを被っていただきたいものです。

 

 

*1 අහේහේ මහා යක්‍ෂ රාජයා