224日目 青い光の宝石が

 

納戸から1枚のDVDが出て来ました。高校2年生の文化祭でバンドをやったときの録画です。

メンバーの家族が撮影したものを数年越しに送ってくれたのですが、そのときには既に地元を離れていて。たまに帰省しても見ようとはならず、そのまま放置していたのでした。

しかし今日は、どうしてでしょうか、ぜひともこれを見なければならない気がします。

期待と不安に胸を締め付けられながら、私はレコーダーの再生ボタンを押しました。

 

私にとって、過去とは恥そのものです。

目立ちたがり屋だった小学生時代から一転、中学の後半で強烈な羞恥心に襲われました。これまでの自分の行動があまりにもガキすぎて、周りにどう思われていたのだろうと恐ろしくなったのです。

すると今度は、きわめて閉鎖的な行動に走り、却って気持ちの悪い奴になってしまいました。明るいようでいて実は凄く陰気な、よく分からん奴。世間に疎くて現実感がない。そんな「変人」という評価に終始する高校3年間だったように思います。

大学に進学してから、私は高校までの交友を徹底して捨て去りました。ある程度の理解があった盟友たちだけを残して、その他の同級生達とは一切の関わりを断ったのです。

見知らぬ土地・見知らぬ人との生活の始まりに、気分がせいせいしました。地元で生み出してきた己の恥を、全て捨て去ったのだから。あのみっともない自分と、お別れしたのだから。

 

大きな画面に、粗い映像がぱっと映りました。

公立校らしい、垢抜けないけれど青春の香りをまとった学生たち。その真ん中に、白い半袖の俺がいました。色白なりにちゃんと日焼けして、小さなストロークハイハットを刻む俺が。

すっかり喉が張り裂けて半狂乱となったボーカル。リズムに乗って笑みを振りまくベーシストの女。黙々と手元に集中する、2人のギタリスト。そんな青春の一幕のなかに、痩身の俺自身もまた、平静を装いながらも必死にスティックを振って、タムタムを叩き鳴らしながら体育館の熱気を浴びていたのです。

ボーカルの声が切れ切れになったり、音響のアクシデントに見舞われたりして、滅茶苦茶の有様となった俺たちのバンド。それでも彼ら高校生たちは、勢いとガッツで3曲を走り切り、色とりどりの声援に手を振りながらステージの裏手に消えていきました。

 

私の過去には、恥があります。両手に抱えきれず、今でも魘されるほどの、膨大な恥が。

けれども、思い出の中にはいくつかの宝石が交じっていました。恥の山に埋もれながらも、確かに青色の光を放つ宝石が。

5年越しにようやく拾い上げたその石は、厚くなった手のひらの上でころころと、美しく転がるのでした。