688日目 知らん曲の話に微笑むイクノ女史になる

 

 

ファイヤワークス!!!!!

シュボオオオオオオオオ!!!!

 

 

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烏滸がましくも先日の日記で、俺は自分のことを「ウマ娘で例えるならネイチャマヤに似ている」と宣言した。

 

 

だが、日を空けて改めて客観視してみると、俺が国民的愛妻鬼モテ幼女であるはずはない。日頃のコミュニケーションにおいてどのように振る舞い、周囲からどのように扱われているか? ということを考えると、自ずから結論は導き出される。

イクノディクタスである。

 

 

イクノさんがどういうキャラであるかは、見た目の第一印象の通り。真面目かつ冷静な言動が多くて、グループ内のまとめ役の太鼓判を押されている女である。

しかし同時に、このタイプのキャラの宿命と言うべきか、絶妙な感覚のズレで図らずもウケを取ってしまったり、周囲で盛り上がっている話題に対して(よく分かりませんが、楽しそうですね……?)となんとなく微笑んで誤魔化したりする、そういう「脇役っぽさ」が切ない役回りでもある。

これはもう間違いない。中くらいの関係性にある人との交流において、俺とはすなわちイクノさんである。キャラ像が定まってほっとした気分だ。自分を何らかの型にはめて捉えることは自己形成の面から有効である。

……しかし惜しむらくは、イクノさんが俺の個人的な好みにまっったく合致せず、1ミリもテンションが上がらないことだ。

 

 

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さて、このたびイクノさんこと俺は、同僚のM1であるテイオータイシンヘリオスダイヤと5人で1泊2日のレンタカー遠征に行ってきた。……と言われてもピンと来ない人のために、簡潔にこう表現しよう。グイグイ系男子クールボーイギャルが、おもしろお嬢様の別荘へお呼ばれしたのである。ほんに個性的なメンツが揃った研究室だと思う。

 

 

もちろん、こんな平日に院生がフリーダムに旅行をしていたというわけではなく、れっきとした「集中講義の受講」という目的があっての弾丸遠征であった。とはいえ、非日常的体験は目いっぱい楽しむのがオトクというもの。

俺はレンタカー旅に強い苦手意識があるのだが、今回は短期間の往復だったこともあり、たいへん楽しく珍しい時間を過ごすことが出来た。一丁前に花火やトランプで遊ぶなどして同年代の男女と過ごす夜を満喫できたというのもあるのだが、何より仲間たちの性格が柔和で、モラルが高く付き合いやすい連中であることが嬉しかった。この二日間の経験は、学部を含めた大学時代の思い出の1ピースになりそうである。

 

……だがしかし、安心して欲しい。きりちにっきは「青春青春❗大学最高❗❗湘南乃風❗❗❗」的なノリを読者に押し付ける日記ではない。陰キャたる我々の意識は自身の内面に向かい、その度に静かな反省を引き出す。今回の旅で俺は、改めて自分の「浮世離れ」の寂しさを味わうことになった——もちろん、マイナスな意味である。

何が寂しかったかと言うと、世間一般のポピュラーな音楽や芸能ネタが分からず、話題に入っていけない時間が多々あったことだ。しばらく車に乗っていて、だんだん話題が尽きてくると、後部座席のギャルたち3人がオーディオをかけようとキャッキャし始める(この行動も個人的には意外だ)。そして誰かがサブスクの流行曲のリストを再生し始めると、ギャル・お嬢様・グイグイ男子は「この曲めっちゃ好き!」「マジで!?気が合う~!!」と大騒ぎの様相。運転席のクールボーイに目をやると、小さな声でメロディを口ずさんでいる。……そうなれば助手席の俺は、彼らの盛り上がりに水を差さないように、ふっと黙って微笑むことしかできないのである。

日頃から「King Gnuも髭男もアニメもドラマも全然分かんねー」という自覚は持っていたのだが、こうして同年代と交流することで、改めて自分の知識と同年代に広く共有される文化との接触面の小ささを思い知らされる。無論、異なる趣味を持っているということは決して悪ではなく、気の持ちようによっては自分の個性であると胸を張れるかもしれない。だが、ノリで始まったお手製イントロクイズに全く太刀打ちできず、1曲ごとに「これは知ってる? 知らないか~」と気づかわれるのは悲しいところがある。同僚とより仲を深めるためのツールとして、最低限は懐メロなどの世代的文脈を理解しておくべきだったな……と無力を感じることになるのだ。

 

「イクノさん」ではなく「イクノ」と気軽に呼んでもらい、「イクノめっちゃセンスいいじゃん!」とギャップ萌えしてもらえるようになるためには、偏ったものしか摂取しない堅物オタクのままではダメだ。

だが、その道のりは長く、正直面倒くさい。たまに絶妙な疎外感を覚えつつも、控え目な扱いを受け入れて名脇役としての振る舞いに邁進した方が、気は楽になるのかもしれない。