964日目 ニューロマンサー

 

ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』を買って来た。サイバーパンクと呼ばれるジャンルの嚆矢となったキザでハードボイルドな名作が文庫本サイズに濃縮されている。

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ネオンと夜と雨の大都市、酒場のやけっぱちな会話から始まる物語。退廃的な一匹狼の若者、近未来ディストピアに蠢く数多の組織と個人たち。まさに教科書のようなサイバーパンクSFで、現代のあらゆるフォロワー作品(Cyberpunk2077など)に受け継がれた要素がそこかしこに鈍い輝きを放っている。

読みにくいと噂の気取った文体も、慣れてしまえば存外悪くない調子で、朧げな認識の中にじわじわと脳が形を取ろうとしていく。キザったらしい括弧やルビの多用、掴みきれずともニュアンスたっぷりの固有名詞、緻密で詳細な情景描写。

現代のサイバーパンクは数多あるちょっと尖った類型のひとつとしてファッション的に参照されている。かく言う私も、なんとなくの雑な憧れを抱くにすぎない。だからこそ、原典を読むことには何らかの意義があると思い、いまうたた寝から目覚めた私は再び読みさしのページを開く。