「ナツノカナタ」。
Steamで無料で遊べるこのノベルゲームに、あまりにもいろいろな感情を刺激されて……。
ぜひあなたにもプレイしていただきたいと、ここでご紹介させていただく次第です。
もし可能ならば、ぜひ、夏らしいエモーショナルなBGMを聴きながらお読みください。
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朝露の旅 - ナツノカナタ original sound track - YouTube
「ナツノカナタ」の主人公は、高校2年生のナツノ。東京の郊外に生まれ育った女の子です。
原因不明のパンデミックに覆われた終末世界。暴徒化した「感染者」が街を跋扈し、人々を襲っています。そんな過酷な世界の中を、ナツノは無免許のバンで巡り、廃墟を漁って食糧を集め、飢えをしのいで生き延びているのです。
そして「あなた」は、古びたパソコンを通してナツノに語りかける、別世界の存在です。パンデミックなどない平和な世界から、ナツノの長い旅路に寄り添います。
本ゲームは、ノベルパートと探索パートの繰り返しで進んでいきます。
ゲームブック風の探索パートでは、自己判断でぐんぐん進んでいくナツノに対し、あなたは持ちものの使用を促したり、行先を提案したりしてサポートします。キーボードで単語を打ち込み、ナツノと通話するという形式で、冒険を共にするのです。
道中では飢えそうになったり、危険な感染者に接敵することも。食べ物や武器をクラフトすることを忘れないように!
探索でキーアイテムを手に入れると、ストーリーパートが解禁されます。
手順のサポートは手厚いので、行き詰まったりすることはなく、安心です。エモくて切ないアンビエントなBGMを聴きながら、パンデミックを生きるナツノの物語にゆったりと浸ってください。
物音がする部屋を恐る恐る調べると、なんと生存者のお姉さんが!
何人もの生存者との出会いの中に、琴線に触れるいくつもの繊細な物語が生まれます。
同行者がいると、探索パートも2人仕様に。放っておくと各人がずんずん進んでいってしまうので、じっくり読んで指示を出しましょう。
美しい夏の世界に浸っていたいところですが、頭の片隅には常に、パンデミックの恐ろしさがこびりついています(といっても、ホラー画像等は一切無いのでご安心を)。
不可解な感染者の様子。なかなか真相に辿り着けない、病の謎……。
ナツノの物語は決して順風満帆ではなく……。
あああああ……。
とまあ、こんなところでしょうか。本作「ナツノカナタ」は、無料で公開されていながらも、非常にハイクオリティで緻密なストーリーへと誘ってくれる素晴らしいノベルゲームです!
プレイ時間は4~5時間ほど。手軽に中途セーブができて、続きから始めるとき用のあらすじ紹介も充実しています。
ビジュアルやコンセプトなど、ひとつでも「ビビッ!」と来るところがあった方には、ぜひお気軽にプレイしていただきたく思います。
……以上が、ここに「書ける」範囲でのご紹介。
「ナツノカナタ」の本当の魅力をお伝えしようと思ったら、もっと核心に触れる部分を出さざるを得なくなってしまう。スクショをお見せすることもできません。
このように書けば、勘づく方もいらっしゃるでしょう。巷で「とりあえずプレイしてみて!」と言われるタイプの名作には、往々にして大きなどんでん返しや、プレイヤーの思い込んだ前提を覆すような展開が仕込まれているものだと。
もちろん、その通りです。ナツノカナタにはそういった要素が含まれています。
しかし! 私は、そのような驚きの要素があるということを敢えてオープンにしてでも、なんとかしてあなたの興味を惹きたい。
その理由は単純です。ナツノカナタは「あーあー、そういう演出ね」で済まされるような、低い次元の作品ではないからです。テンプレート的な「夏のエモさ」に誤魔化された、もっと大きなスケールのテーマとストーリーが、あなたを待ち受けています。
きっと、あなたの期待は何度だって、軽々と越えられてしまうでしょう。
いや~~~う~~~ん、これが限界かな。月並みな言い方になりますが、あとはもう、ご自分の目で確認していただくほかはない。
……ああ、いえ! そんな肩肘張らずとも、構いませんから。単に「アートワークがオシャレだな~!」くらいの入口でも良いですので。
私だって、普段はノベルゲームというジャンルにはほとんど触れません。なんとな~くのお気楽さでやってみただけなんです。
まあとりあえず、ダウンロードだけでもしちゃってみませんか? なんせ、タダなんだし。俺はいま公認グッズショップを調べてるけど。
以下、特大ネタバレ注意
(1ミリでもプレイする気になってる人は、読まないでね~)
コロナ禍のパンデミックで露わになった、「ひとり」の寂しさ。
コンピュータシミュレーション理論や、メタバースとAIがもたらすリアルな仮想世界。
理由なくこの世に生を受けた私たちのやるせなさ。
「消えてしまいたい」。あるいは、
「不条理な世界ごと消えて欲しい」という切なる叫び。
このゲームは、思春期の普遍的な絶望から、敏感に拾い上げた時事的な問題まで、人類文明の根幹に関わる多様なテーマと――それでいて、身近なテーマと向き合おうとしている。……私はそう思うのです。
「現実は……」
「そんな風に……すべてのことに、納得できる理由があったりしないんだ」