183日目 味を確かめ何のため

 

確かめたくなります。あの輝かしきひとときの体験を。

 

駅構内へ消えていく友人を見送ったのち、私は早朝の河川敷をふらふら歩いて帰りました。ロッテリアに寄ってエビバーガーを齧り、寝不足の重い体を介護するように、人気のない通りをゆるゆる流れていきます。

帰宅して扉を開けると、部屋はあまりにぽっかりとして、野郎共と三日三晩騒いでいたのが噓のよう。濃密な体験が煙と共にふわりと失せて、あとに残ったのは食べ散らかしたお菓子のゴミと紙コップだけ。まとめてゴミ袋に放り込むと、すっかり部屋が元通りになりました。

 

……目を覚ますと、もう夕暮れ。冷え切った肢体を布団の中に埋めたまま、今夜の予定を考えます。薬局で歯磨き粉を調達して、それからスーパーへ行って。飯は何にしようかな。

こんなとき、ふと確かめたくなるのです。昨日食べたばかりの、あの楽しい空間で囲んだ飯は、一体どんな味だっただろうか、と。

 

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あれだけ「ピザはみんなで食べてこそだな!」などと豪語しておきながら、今日はおずおずと、一人でピザに勤しみます。

ワイルドなトマトベースに、食いでのある分厚いベーコン、香り高いジェノベーゼソース。ふわふわのハンドトス生地が、心に安らぎを与えてくれる。

しかし、これだけ豪奢な晩餐であるというのに、なぜだか味がくぐもって感じてしまう。ひとり孤独な男の舌に、きらきら燦めくイタリアンピザは、あまりにもくどくどしい……。

 

 

 

……なんてことを書こうと思っていたのですが、何だコレ、普通にめちゃくちゃウメぇな。なんなら昨日囲んだピザよりも美味い(昨日は帰りに寄り道したから冷えッ冷えだった)。ナイーブな方向性にもっていくつもりが、ごくニュートラルなテンションを維持してしまうとは。やっぱガーリックって偉大だよな。

 

寂しさや恐れはいつだって胸の内にあるけれど、取り立てて大きな脅威がすぐそこに待ち構えているってわけではない。適当にぷゃっと、イイ感じの作業で暇を潰しながら、次なるチェックポイントに向けてじっくりと春を味わっていきたいと思います。

まあ、ピザは高すぎるからもう頼まないけれど。ちょうど明日からマックのポテトが復活するし、しばらくは胃袋をでっかく広げておこうかな。

 

 

 

さてここからは、友人らときゃあきゃあ騒ぎながらプレイしたゲームの紹介です。こんなときでもないと、一人じゃなかなか触れらんないタイトルってあるよね。(画像はネットから拾ってきたものです)

 

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Keep Talking and Nobody Explodes

「完全爆弾処理マニュアル」との邦題がつけられたパズルゲーム。プレイヤーのうち一人は画面だけを見て、もう一人は紙のマニュアルだけを見て遊びます。互いに意思疎通しながら、制限時間内に全ての手順をこなすことが目標です。

爆弾のモジュールはどれもこれもなかなかの「不親切」ぶり。似て非なる構造の数々、勘違いを誘発する紛らわしい項目、集中を搔き乱す演出など、よくもまあこんな短い時間で解かせようとするもんだと感心させられるギミックばかりです。

しかしまあ、初めは手探りで爆死しまくっていた我々も、やがてモジュールのイロハが分かってくるにつれて、だんだんと顔つきが精悍になってきました。さながら凄腕の爆破物処理部隊のごとく、互いの指示を先読みして驚くべきスピードでコードを切っていきます。この「熟達してる」感が気持ちイイ、ユニークなゲーム体験でした。

ちなみに、後から遅れて参加した友人は終始「😮❓」という表情。そらそうだわな。

 

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プロ野球スピリッツ2019

お前は野球が好きで、俺も野球が好き。それならやることはひとつしかないよなぁ?

……というわけで、今回もプロスピガチンコ対決です。つっても別に、普段からやり込んでいるわけではないので、山あり谷ありガバありのお笑いプロやきゅうですが。とりまプレイボール!

困ったらストレートばっかり投げる俺と、焦ると真ん中に球が集まり出す相手とで、ゲームは2試合とも乱打戦に。しかし、神のご加護か偶然か、好球必打の強振作戦が見事にハマり、両試合とも大差をひっくり返しての逆転勝ち!

あんまりヒートアップしたもんだから、周辺の銭湯という銭湯が全部閉まってしまいました。家主曰く、マンションの温水設備が死んでいるのでキンキンの冷や水を浴びるしかないとのこと。ゲームセット!

 

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影廊 -Shadow Corridor-

誰が言い出したか知らないが、最後はホラゲーをする流れになりました。その場にいる全員がビビりまくりです。ダメじゃねーか!

恐ろしい怪異が出没する暗~い廻廊を、息を潜めながら歩き回り、アイテムを集めて脱出しなければなりません。まずは友人がプレイするのを後ろから見守っていましたが、ほんに視界が悪くて不気味なことといったら。鈴の音が大きくなり、足音が錯綜し、そして蠟燭が激しく明滅するとき、緊張は胸が破裂せんばかりの最高潮に達します。

しかし実は、我々には心強い味方がおりました。このゲームの熱狂的なギークが遠地から配信を見ており、さながらRTA解説者のようにベラベラとギミックを詳説してくれたのです。

プレイを見ているうちに、だんだんと恐怖心は薄まり、代わりにゲーム性への純粋な好奇心が頭をもたげてきました。そして、いよいよ私がマウスを握る番になりますと、そのこぶしには熱いやる気の血潮が脈打っていたのです。

実質メタルギアじゃね? と己を奮い立たせること一時間弱。ついに怪異の目を躱しきって脱出することができました! よっしゃコラ参ったか! クソしょぼい雑魚妖怪どもがよ! 帰れ帰れッ!

え? 次は第2ステージに挑戦してみろって? 調子こいてんじゃねえ! 一人でホラゲーできるわけねえだろが!