908日目 異様に「3大ベストゲーム」にこだわる男の手記。

 

「人生の3大ベストゲーム」。あるいは「3大アニメ映画」「3大特撮ヒーロー」。人は誰しも心の中に、大切な「3大」を仕舞っているもの。

もしかすると、序列がしっかり決まっているなら「ベスト3」の場合もあるかもしれない。けれども、「素晴らしいものがたくさんあって決めきれない!」……そんなかけがえのないホビーに対しては、5大より四天王より、「3大」がしっくりくると思いませんか? そう。ちょうど互いに優劣がつかず、個々の強みがはっきりと分かれて、魅力的に語りたくなる数。それが「3大」です。あるいは「御三家」ともいう。

 

私の「3大ベストゲーム」ですか? もちろん、押しも押されもせぬ3名の役者が揃っていますよ。

・悲壮感と衝撃に満ちた美しいアクションゲーム・二ーアオートマタ。

・反逆の意志みなぎる青春スタイリッシュJRPG・ペルソナ5 ロイヤル。

・研ぎ澄まされた風光明媚なオープンワールドチャンバラ・ゴーストオブツシマ。

もちろん、これまで五万と遊んできたゲームの中には、もっとプレイ時間の長いゲームや、もっとドハマりしたゲームだってたくさんあります。世界樹の迷宮パワプロクンポケットなんて、何百時間遊んだでしょうか。それから、サイバーパンク2077のように「よく出来ているなあ」と思ったゲームもいくつもありました。

……けれども、単にハマったというだけでなく、心を揺さぶられ、打ち震えるほど感動したゲーム——今でもその物語や音楽、戦闘の興奮を思い出しただけで胸がどきどきするようなゲーム、と言われたら? それが私にとっては、先ほど挙げた「3大」なのです。引きこもっていたきりちに青年の脳を揺さぶり、心の栄養となったゲーム。それらをちょうど収まりよく、バランスよく思い出の額縁に飾れるのが「3」という数字。私はそう思っているのです。

 

良ければあなたもここで、ゲームでなくてもいいから、あなたの中の「3大〇〇」を思い浮かべてみてほしい。きっとそれらしきものが、心の片隅のアルバムに挟まっているはず。

 

 

さて、誰しも自分なりの「マイベスト〇〇」を考え、悩んだことがあると思います。……けれども、時代がどんどん進んで、世界に山ほどいるクリエイターたちが青天井に研鑽を積んでいくと、いずれは過去の作品を乗り越えて上に立つ素晴らしい作品が現れます。これは「古いものは悪い」と言いたいのではない。むしろ、新しいものの良さを認めて、心の中の宝箱をどんどんアップデートしていくことは良いことです。

けれど、もしもそうした新作のひとつがあまりにも面白すぎて、自分の中の「3大」に食い込むほどの存在感を見せて来たとき、さて、一体どうしましょうか? 既に悩みに悩んで、どうしようもなく煮詰まっている「3大」の枠組み。3つの玉座。それらのどれかひとつだけを選んで、陥落させるということは不可能だ。

それじゃあ果たしてそこに、全く同列に並ぶものとして新顔を招き入れ、「四天王」として捉えなおせるか。……いや、4はイヤだ。なんとなく、落ち着かない。それに、4つもあると属性に被りが出てきて、じっと見比べればどこかに優劣の段差があるような、そんな気がしてくる。誇らしく自信を持って挙げるには、4は多すぎる。

いっそ逆に、もっと視野を広げて、なんとなく収まりの良い「5大」にしようか? 無論、そんなのはナシだ。無理矢理入れた5番目がどうしても「数合わせ」になって、見劣りしてしまう。

 

例えば今年の秋に登場する予定の「メタファー:リファンタジオ」は、ATLUSが近年最も心血を注いで制作している超大作のRPGとなる予定だ。これが手に入った暁には、私は修論もなにもかもほっぽって、コントローラを握り締めて壮大な物語に熱中するだろう。そして、数十時間~百時間ほどもダイブし続けた後に、きっと「こんな傑作に出会えてよかった!」と満腹になるに違いない。

けれども、いざ素晴らしい体験を「3大」の偉大な思い出と並べて数えようというとき、問題が生じる。まず「四天王」とするにはやはり、どうしても「ペルソナ5」と「メタファー」が似たもの同士すぎて、勿体ないような感じがある。なにせ開発会社が同じなのだから。……けれど、だからといって、ペルソナを王座から追い落として棄却して新たな「3大」と呼びならわすのかというと、それは違う。私は各ジャンルの王者をひとつずつ選びたいわけではない。オートマタやツシマと互角に輝く無二のペルソナを、頭の中の収まりを良くするためだけに不当に追い落とすのは私の良心が許さない。

ああ、落ち着かない。私は物事を頭の中でカタチよく整理するのが何より好きなのだ。「3大」を搔き乱す新たな神ゲーとの出会いは、楽しみであるとともに、恐ろしくもある。これまでの日記で折に触れて「これがマイベストゲームだ!」と喧伝してきた作品でも、自分の中で序列が塗り替えられてしまえば、やがてはこんなに煌びやかに見えていたことを忘れ、言及すらしなくなるかもしれない。それは、思い出をひとつ失うのと同じことだ。なんとも落ち着かない。どうしよう。どうこじつければいいだろうか。心配だ。

神がかった作品との出会いが、自分が信奉してきた「3大」の一角を崩すときが来る。なんてそわそわするんだろう。整理のつかないこの思いを、私はどこに仕舞いこめばよいだろうか?

 

なんともあれ、素晴らしい作品と新規に出会うのは良いことだ。自分の中の序列が揺らぐかもしれない、と不安になるくらい面白い経験ができるなんて、なんと幸せなことだろう。

ついに明日(2024/2/2)の午後に発売される「ペルソナ3 リロード」は、3大を脅かすほどの存在かは分からないが、相当の爽快感と満足感が得られるゲームであるという先行レビューが既に出回っている。リメイクとはいえ、技術的には「ペルソナ5」の正統進化であり、いくつかの点で上回ってくる可能性は十二分にある。

怖いかって?

楽しみさ。そのために高い金を払って、休みも取ったんだ。

存分に暴れさせてくれ!