826日目 霜月の夜は

 

寒い中をてくてく歩いて帰った。スーパーの大袋を右手にぶら下げて。

やいや、寒いや。楽しいなあ。俺ァ寒いと嬉しくなっちゃうんだ。

風の冷たさは、昔の思い出を呼び覚ます。例えばほら、雀荘で働いたあの冬の記憶なんかが立ち上がってきて。ジャラジャラと鳴る自動卓に囲まれながら黙々と牌を拭いた、あの空間にもう一度だけ戻りたくなる。

 

それより何より、初冬の頃ってのは一番ふとんが心地よい時期だ。

雪平鍋でキムチうどんを食べて、そのまま後片付けもせず、枕と抱き合って毛布にくるまっている。

今夜は日が回る前に寝よう。長い長い、しんと静かな霜月の夜を味わって寝ようや。