699日目 だから俺はミラ子なのだ

 

いろいろあって、一人でサイゼリヤに来た。

一人でワインを飲もうと思った。

一人で……。

 

……かった。

食べなかった。金曜の夜で、混んでいたからだ。

だから、冷凍パスタを買ってきて、自宅のPCデスクで食べた。

 

 

いいよ。美味いし。サイゼより安かったから。

別に、ね。

……ああ。

 

ミラノ風ドリア、食べたかったな。

ミラノ風ドリア……。

 

ミラ子……。

 

 

 

ミラ子は、ウマ娘である。フルネームでは、ヒシミラクルという。

かなり最近に登場した子で、完全にノーマークだった。だが、ここ数日で急にマイブームが来ている。

何でも、俺の友人らによると、俺をウマ娘に喩えるならミラ子が一番近しいというのだ。

 

これまできりちにっきでは、やれネイチャに似ているだとかマヤと行動が近いだとか、とかく俺好みの人気者ばかりを挙げて来た。だが、自分自身による性格診断というものは信用がならない。

だがしかし、ミラ子に似ているという意見は複数人で一致した。自分と美少女のパーソナリティが重なり合うのはたいへん楽しいことだ。何だか「ナニモノか」になれたような気がして、俺はとても喜んでいる。

では果たして、ミラ子とはどのような人物なのか。まずは、下の画像を見てほしいのだが……

 

 

ウマ娘の中で、一、二を争うほど太ましい

一見すると普通にクオリティの高い美少女なのだが、冷静になってみると、美少女JKソシャゲのキャラとしてはなかなか見ないボディバランスをしている。

そして、ウマ娘では珍しいことに、比較的やる気がない性格である。あまり努力をするタイプではなく、要領で上手いこと躱しているタイプであると。

さらには、泳げない

 

太ましく、やる気がなく、泳げない……。

それは、完全に俺ではないか。

 

ちなみに、キャラ付けとしては「天才ではない平凡な女の子」だというのだが、そこは引っ掛かる。なぜなら俺は非凡だからである。

と、そのような旨の懸念を示したところ、口を揃えて「そうやって調子に乗っているところがミラ子っぽい」とツッコまれた。

なるほど。調子がいいところもあるのか。それは俺だな。

 

ここに来て、ついに正解に辿り着いてしまったか……!

俺は、ミラ子だったのだ。

 

 😮⭐😮⭐😮⭐😮⭐😮⭐😮

 

今日の午前中は、研究室の同僚たちとグループ課題の打ち合わせをしていた。

例えば俺の同僚①は、ウマ娘で言うならトウカイテイオーに喩えられるようなキャラで、単に溌溂なだけではなく、正直かなりの有能だ。他の面々も、それぞれ性格は全く異なるが、いずれも高い技術を持つスペシャリスト揃いである。

彼ら彼女らは、何のためらいもなくAdobeを操る。イラレだフォトショだを当たり前のように使って成果を共有し、デザインについて雑談に華を咲かせている。おまけに就活ももう何十社と受けている、意識高い系である。

……そんな同僚たちの姿に圧倒されながら、俺はひとこと、「あっ……俺アドビ使えないんで、なんか文章とか整えたりします……。はい……」と小さくなるしかなかった。

 

圧倒的な劣等感と、無能を晒した恥ずかしさ。平凡とはまさにこのことだと思った。

俺はネガティブなミラ子なのだ。

 

 😮⭐😮⭐😮⭐😮⭐😮⭐😮

 

すっかり調子を失ってボロボロになりながら、ひとり先にお暇して、アパートに帰る。冷房が効くのを待って、シャワーを浴び、スーツに着替えて夕方を待つ。

今日は就活関連で初めての面接があるのだ。

指定された時刻にミーティングURLから入室すると、そこには試験官たちが。……だけでなく、他の応募者も同じ部屋に呼ばれていた。「しまった、個人面接じゃなかったのか」……想定外の展開に、ひととき焦りが募る。

 

だが、しかし。そこからの30分間、俺はまさに面目躍如だった。

決して出来がいいとは思わない。通過を確信したわけではない。だが、明らかに興味を惹いた。何なら、小ボケでウケを取った。

どうやったのかと言えば、答えは明白で。俺は面接というものにまったく緊張しないのだ。「悩んだところで結果は変わらん」「なるようになるさ」。そんな開き直りのメンタリティが俺の持ち味である。

 

少なくとも、この短い面接時間における最大のパフォーマンスは発揮できたという満足感……これこそがまさに、すぐ調子に乗るということ。

ならば俺は、ポジティブなミラ子なのだ。

 

 😮⭐😮⭐😮⭐😮⭐😮⭐😮

 

とまあ、見苦しいことをつらつらと述べ立てて申し訳ない。

この文章は、一般成人男子学生が自分とウマ娘を重ね合わせようと躍起になる、情けない日々の記録である。

 

だが今日は、敢えて言おう。言わせてほしい。

恐れるな。美少女だったら良かったのに。とか、推しになりたい。とか、そんな気持ちから目を逸らすな。

自分と推しとの関連項をひとつでも見つけたとき、自分の体に流れる血のわずかな部分は推しのそれと交わる。それだけでいい、十分だ。前向きになれるなら、妄想だってなんだっていい。

勘違いを楽しもうじゃないか。烏滸がましい思い過ごしをして、ちょっとオシャレをしようじゃないか。

 

だから俺は、今は、酔っ払いのミラ子なのだ。