589日目「何者にもなれない」

 

正しくカッコいい振り付けができていなくても甘々で採点してくれる優しいダンスゲームがあるのだが、それが却って私の情けなさを煽った。

ダンス、音ゲー軟式野球、麻雀……。どんな遊びにも必ずストイックなプレイヤーがいる。本人がどう思うかに関わらず、彼らは街の暗がりでひっそりと誰かのヒーローになっている。

「俺は何者にもなれない」なんて言葉は、そんなヒーローを眺めることしかできない時間にぽつりと溢れる。慣れない体の動きに喘ぐ、このつまらない口から。