あまりにもはみ出したかったので、ついに合法的な手段を使ってSSRアイドルを入手した。りなみん――いや、莉波お姉さんである。
見ればひと目で分かる、お姉さんキャラ。どう見積もってもきりちにのストライクゾーンにではない。しかし、第一に歌が上手いのだ(リンクは後ほど貼るので、ぜひ聴いてほしい)。そしてもうひとつ、莉波お姉さんは他の9人のアイドルにはない明らかな特徴がある。
物語が始まって間もなく、りなみんは古の泣きゲーヒロインのようなことを口にする。
学マスのほとんどのヒロインは、初対面からプロデューサーとの仲を深めていく。しかし、りなみんだけは違う。二人は小さな頃のある時期に出会い、一緒に過ごした夏の思い出を共有する関係にある。
一人ぼっちで寂しそうな少年に声をかけ、夏のあいだじゅう仲良く遊んだ、優しくて素敵なお姉さんとの再会である。
そう、ここに倒錯があるのだ。大人びたお姉さんと、弟のような少年——という思い込みは、あれから数年ぶりの未来で、大学一年生のプロデューサーが高校三年生のアイドル候補生をスカウトする、という形で覆された。
他の多くのヒロインが高校一年生でプロデューサーとは三歳もの差があり、どことなく保護者と子どもの関係に近いような微笑ましいニュアンスがある中で、りなみんだけは明確な「近さ」、あるいは一歩間違えそうな「危うさ」のようなものを身に纏っている。それも、単に歳が近いというだけでなく、弟のように甘やかしていた男の子が実は先輩で、これから年下のお姉さんを管理・育成する――という、いわば主従逆転にも似た、これだけでもドキドキする何か。
終わってる性癖の告白とかではない。りなみんのあふれる慈愛を活かして、お姉さん系アイドルとしてデビューしようという提案である。妹系で行こうとするも上手くいかなかった彼女の過去に学び、素材の良さを引き出す方向に舵を切るのだ。
違うよ?
さて、先ほど「倒錯したドキドキする関係」と表現したが、何もこれはプロデューサー(=プレイヤー)の勝手な妄想とかではない。
むしろ、莉波の方がひとりでに何かを感じ取り、モヤモヤくねくねと揺れ動く素振りを見せていく。
友だちからプロデューサーとの活動の進み具合を聞かれただけなのに、あからさまな動揺を見せている。
そして、不用意な発言でプロデューサーの株を下げていく。
お姉さんキャラの確立を目指して努力を重ねる傍ら、
だんだんと本当にキケンな方面へ転がっていく。
こう言われては断るものも断れないが、
それにしたって、ちょっと、まずい。
ちょうど良い日除けがある。
そうなったら、
こうなるわな。
で、
そうなるわな。(美人だ。)
いかにも教科書通りの甘々ラブコメといった趣。特に新鮮とかいったことは無いが、ゆるりと温かいおかゆのような、なんだろうこの、心安らぐ、愛。
と、ここで「そういえば年下だった」と思い出したときに、香るスパイス。いっこ年下で、なんだか空回りしているちょろい女の子で、けれども君は僕の「お姉さん」。何と言えばいいのか、甘味の異なるクリームがぐるぐる混ざっていって中毒性のあるスイーツになるような、健全のギリギリを二人で攻めるような関係……。
本当に大丈夫なんだろうか君たちは。
と、言っているうちに、
莉波お姉さんは「お姉さん」として再びステージに立つ。
君は素敵な、みんなのお姉さんだ。
ライブ後、不意に莉波お姉さんは思わせぶりなことを言う。
いじらしい。
あまり直接の恋愛感情が描写されない学マスのヒロインの中で、たった一人、こんなにもいじらしい片想いをプロデューサーに寄せる莉波が、どこまでも輝く。そうここに、知る人ぞ知るぎゅっと詰まった魅力があるのだ。
さて、少し場面が変わって、プロデューサーが莉波の初めてのソロ曲を持ち込むシーン。
告白か何かと勘違いしている、そんな莉波がこれまた「良い」。
歌詞が未定のため、自分らしいアイデアを考えてきてほしい。そう伝えて、別日に再び顔を合わせると……
そっかあ……。
そっかあ…………。
いやおい桐谷、あまりにも鈍すぎないか?
ガチどんまい。正統派の片想いヒロイン・りなみんなのであった。
でも、今日も健気に。
がんばれ!!
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clumsy trick - 姫崎莉波
~後日譚(第10話)~
「もちろん、何なりと。」
がんばれ、莉波お姉さん!