855日目 ねこちゃんごっこ、その傾向と対策

 

いろいろと限界なので、今日はねこちゃんごっこをしました。かなり限界です。

ブルアカの新キャラ・キキョウちゃんが二次創作で完全にツンデレねこちゃん扱いされており、シャーレで自由気ままに過ごすさまが全国の先生に癒しを与えています。なので、俺もあやかってねこちゃんになろうという寸法です。オワリです。

 

さて、実際にやってみると、思ったほど簡単ではないことが分かりました。

 

丸まろうにも、体が硬い

「ネコは液体」とよく言われる通り、ねこちゃんになるためには座布団の上でまんまるになれる柔軟さが必要ですが、残念ながら人間の骨格はガッチガチです。ましてや人間の中でも特に体が硬い部類の運動不足成人男性が、座布団の上にキュッと収まれるはずはありません。したがって、体育座りを横に倒すような形で、無理矢理ちぢこまって丸まってる感を出します。実際にやってみてください。意外にも首が死にそうです。

 

ずっと寝てるの暇すぎ

ねこちゃんはスマホを触らないので、ごっこをする人間もスマホは触りません。大体はじっと目を瞑るなり、ときどきわしゃわしゃと髪を掻くなりして、だらだらと時間が流れていくのに身を任せることになります。しかし、平日も土日もない学生に、何分何十分と延々「無」を続けられるほどの胆力はありません。情報中毒者からXを奪うのは過酷すぎる。のみならず、空白となった頭の中に湧き出すのは、就活や研究のあれやこれや。発狂しそうになりながら、それでもやると決めた以上、無言で転がり続けます。

 

舌をしまい忘れるのはわざとらしい

ねこちゃんのカワイイシチュに「舌をしまい忘れる」というのがあるので、当然これを私も真似するのですが、多くの場合人間はぴたっと口を閉じることができるので、わざとやらない限り舌が出るということは無いようです。あまりにも「しまい忘れるためにしまい忘れました」という媚びた雰囲気が漂い過ぎてしまう。「あるある」のためにわざとらしくペロッと出す、これをどこまで純粋なねこちゃんと捉えてもらえるかは疑問が残ります。

 

飼い主の腕、別に要らない

ねこちゃんのもうひとつのあるあるに「人間の体の一部を勝手に占有し、離さない」というのがあります。かわいいよ~、でも助けて~!(笑)という嬉しい悲鳴はバズツイの定番です。けれども、実際にそれを真似して、人間サマの腕に絡みついてみたりすると、想像以上に意義を見出せない。別に面白くも無ければ、気持ちよくも無いんです、人間サマの腕って。特に理由など見つからないわけですが、本気でごっこをやる以上、とりあえず続けるしかない。私も向こうも困り果てて、一切誰も得しない。

 

やめどきが分からない

心から自分のことをツンデレねこちゃんだと思い込むと、レギュレーションとして人間の言葉は話さなくなります。というか、そもそも意思疎通を図ろうとしません。必然的に黙りこくる感じになります。で、一度ねこちゃんに染まってしまうと「いつやめるの?」という話になってきます。人間サマのコミュニケーションをガン無視してきた手前、今さら急にヒト語を喋って、へらへらと媚びを売るわけには行きません。意地を張るあまり、どんどん時間が過ぎて行きます。今日はESを書かねばならないのに。

 

そうこうするうちに、夜が来ました。夕方に何やら日本酒を一口飲まされて蹴り出され、すごすごと無人の研究室に赴いてESを書いたような気もしますが、どうやら夢だったようです。私はいま、クローゼットの前の座布団に丸まって目を瞑っています。飼い主は忙しなくキッチンと居室を行ったり来たりし、その途中で必ず私の背中と喉を撫でていきます。私は一切気にしないふりをしつつ、ふわりふわりとしっぽが揺れます。ふふっと微笑む声が聞こえます。晩ご飯に、焼いた魚の香りがします。窓の向こうにバイクの音が聞こえ、やがて遠ざかっていきます。飼い主が両手に皿を乗せて戻ってきて、小さなちゃぶ台の前にあぐらをかきました。私はすかさず起き上がって、その毛だらけの脛の上に乗り込み、わざとらしく舌を出して目を瞑りました。