金曜の夕方、研究室を退くその瞬間までは、四月らしく前進的で直立したモチベーションを持っていたはずなのに。
たった二日の週末休みを挟むだけで、完全にスイッチが切り替わってしまう。
社会に向かって開かずに、インターネットと美少女と古い友人のことだけを考える時間。その甘美な重力。
砕けて解けて、講義も研究も忘れて。無意味の明後日へゆったり流れゆくひとときは、いたく健やかだった。
けれどもそれは、豊かで充実した時間たり得ない。深みに引きこもっていた学部半ばの頃に比べれば、今はもう、どっぷりとゲームに浸かろうという欲が失せてしまっている。
どうやらもう、巡って来ているらしいと分かる。いよいよ「先」を見るべき季節が。
本能的に感じ取る、夏休みの終わり。余韻を味わう心の置き場は、この胸の内に無い。
しかし、一方で……秋の深まりは必ずしも、機が熟したということを意味しない。棚に並ぶには程遠い、青いままの果実。
就活。研究。何から何まで。今はそれらを「やるべき」ときになったというだけで、それらを「やれる」状態に仕上がったかと言われれば、そんなはずもなく。
徐々に、徐々に細く爛れていく。焼き切れかかっている。
オンになり切れず、オフにも浸かれず、日ごとに繰り返すスイッチング運動の真ん中にある、辛うじて持ちこたえているだけの一本の銅線が。