980日目 当たり前みたいに軽やかな

 

長いスロープを歩き登ると、真新しいテラスには人っ子ひとり居なかった。暖かい春の風に舞う桜の花びら。おあつらえ向きの心地よい晴れの日に、広々と青空に開かれて静かな、ひみつの屋上。

海老とルッコラのサンド。街角の珈琲ショップで、ミルクのレギュラーを。ひっそりと始まる四月のピクニック。

遠くの道をゆくファミリーが、見渡す線路のヴューを写真に収めている。羽を広げるようにひらひらと渡り歩く、黒いセーターの女性。ゆんゆんと音を立てて電車が駅を出てゆく。

 

それから、空が暗くなるまで、図書館の地下で本を読んで過ごした。目についた本棚から気まぐれに抜き取った、哲学としての映画論。

打ち放しのコンクリートのモノトーンな静謐に、天窓から差す白い光。まばらに座った学生たちがさらさらとペンを走らせる中、ひとりキャップを深々とかぶって、新書をじっと読み耽る。やわらかいスポットライトに温まる、まっさらな木の天板。

するすると長い講義をようやく読み終える頃、閉館のアナウンスが小さく耳に届く。棚の背を揃えてゆったり階段を上ると、しんと冷えた夜は肌に嬉しかった。

 

できすぎなほどに、土曜日の午後。広げたぶかぶかのパーカーに黒いリュックをしょって、当たり前みたいに軽やかな学生の一歩一歩を。

 

もぬけの殻の研究室に蛍光灯をともして、お気に入りの椅子にすとんと座る。ここから真夜まで、今日という日の締め括りを実りあるものにするために、ノートパソコンをひらりと起動して。

 

3時間ツイッターして帰りました~~~~😭😭😭😭😭😭