で~っかいパフェアイス食っちゃった。スーパーのアイスコーナーの、スーパーカップやガリガリ君がドサドサ入ってるとこじゃなくて、箱とかハゲダッツが並んでる、あんまり開けない棚のとこのやつ。量だけが取り柄の安っぽいやつ。家帰って、米と野菜炒め(肉は入れてない。高いから)を食って、それからバカでかいチョコパフェをもりもり食べた。どこかで「美味い!もう一口」から「吐きそう!あと何口」に切り替わる瞬間があった。絶対に腹を壊すだろうという妙な確信がある。バイトの前日に血迷うべきではなかった。
さて、今日は福祉の話をしたい。長い人類の歴史を紐解くと、人間一人ひとりの持つ困りごとにきちんと目を向け、適切な福祉によって弱者を支えようという社会思想が生まれたのは、ごく最近のことである。個人の困りごとを病や障壁として捉えるのではなく、かけがえのない個性として捉えることこそが、多様性の時代を生きる私たちをより豊かにしてくれるだろう。
そのような高福祉都市の代表例とも言えるのが、超巨大学園都市・キヴォトスである。
例えば、ミレニアムサイエンススクールの自称超天才清楚系病弱美少女ハッカー・明星ヒマリは、その自称が示す通り虚弱体質である。常に車椅子に乗って生活していることから、背中・腰もしくは下肢にも困難を抱えていると考えられる。ミレニアムの進歩的な科学技術によって生み出された車椅子は自律移動機能などを備えているかもしれないが、車椅子から降りなければならない入浴・トイレ・就寝などにはどうしても介助者の助けが必要になる。
しかし、彼女には良き理解者であり介助者である後輩がいる。
和泉元エイミは同じ部活動に所属する一年生で、三年生のヒマリの介護を担っている。口数は少なく、ぼんやりとしているようにも見えるが、知能に長けたヒマリの依頼をよく聞き、彼女の腕や脚代わりとして力強く活躍する。
一見、体の弱い先輩を屈強な後輩が支えるという関係だが、見方を変えれば、自ら判断するのが苦手な後輩を聡い先輩が導くという関係にも読み取れる。このような関係が成立するのは、それぞれの困難が障壁ではなく個性として尊重され、一元的な福祉施策のもとに隔離されることなく、生徒が互いに助け合って生活しようという社会文化が育まれているためである。
惜しむらくは、非常な暑がりのエイミに環境の基準を合わせると、極端な寒がりのヒマリが凍えてしまうという点である。しかし、互いの体質すらも個性あるいはツッコミどころとして認め合い、時に不平を言い合いながらも上手に支え合っているように見受けられる。
トリニティ総合学園の剣先ツルギはやや粗暴な性格で、多動的な行動を取る生徒である。キヴォトスに在住する大多数の学生たちは多かれ少なかれ好戦的な性質を持ち、またそれを良しとする土壌も醸成されているが、そのような中でもツルギほど激しく破壊的な行動を取る者は並外れて珍しいために、彼女が一般的な学校組織の中に馴染むことは容易なことではない。
しかしそんな彼女は、自らの個性を十二分に発揮できる集団と巡り合った。
正義実現委員会はトリニティ総合学園公認の治安維持組織で、学園の中でも膂力に自信のある生徒が所属し、武装勢力の暴動の鎮圧や他学園との有事に備えた威嚇活動を担っている。この集団において、ツルギの喧嘩っ早さと容赦のない暴力性はむしろ頼りがいのあるリーダー的素質として読み替えられ、ついには筆頭委員長として学園の治安維持という大仕事を務めるまでに至った。冷静で理解のある副委員長や後輩委員たちと強い絆で結ばれているツルギは、まさしく適材適所というべき環境の中でのびのびと役割を果たしている。
ただし、トリニティ総合学園の古い体質には問題が潜んでいることも指摘しておかねばならない。
近頃、トリニティ総合学園には少人数教室が設けられ、露出癖、爆破癖、色情症といった特別な趣味・嗜好のある生徒が集められたという噂がある。また、この少人数教室には厳しい試験が課され、基準を満たさない者に退学を迫っているとも言われている。
果たして彼女たちは、一体どのような理由で一般教室から隔離されたのか。神秘のベールに包まれたトリニティ総合学園の内情を伺うことはできないが、もしも彼女たちの個性を異分子と見て排除しようという狙いがあるならば、生徒の基本的人権に関わる大きな過ちを犯していると言わねばならないだろう。
最後に、レッドウィンター連邦学園の例を挙げる。
個性的な生徒の話には事欠かないキヴォトスにあって、レッドウィンターも例外ではない。天見ノドカにはパラフィリア的な症候があり、自ら抑えることのできない窃視行為が問題視されてしまった。また、間宵シグレは学生ながらアルコールに依存しており、健全な心身の状態であると断言することは難しい。
ともすれば二人のような生徒は病気として扱われ、本人の同意なく矯正を受けさせられてしまうケースもある。しかし、レッドウィンターの指導者は高福祉都市たるキヴォトスの一員としての責務を果たし、二人の個性を尊重する画期的な判断を下した。
彼女たちはシベリアに送られた。
しかし、これは断じて懲罰や隔離生活ではない。雪山の禁欲的な環境に置かれれば、望遠鏡を使ったストーキング行為などはやむなしと判断され、ノドカは思う存分にひっそりと覗きを楽しむことができるだろう。また、極限の寒さに晒される旧校舎にあっては、アルコールによって体を温めることは健康のためにむしろ推奨され、シグレは白昼堂々と密造酒に浸ることが許されるのである。
偉大なるレッドウィンター連邦学園は、キヴォトスで最も進歩的な福祉政策を歩む学園である。
おお、徳に篤く寛大なる事務局長・チェリノ様に万歳! 同志よ、万歳!