299日目 Ajillo

 

起きてすぐ、進学絡みの面談。短い時間でしたが、とりあえず自己紹介は満足にできました。なんだか意識も院試の方に向いた気がして、勢いよく家を飛び出し、チャリのスタンドを蹴って出発。

良かったのは、そこまででした。

 

僻地にあるうちのラボ。平日でもあまり人はいません。つまらないデスクにどかっと腰を下ろして、まずは昼イチのオンライン講義を受講します——スマホばかりに集中しながら、ながら見で。

それが終わったら、いよいよ自習開始です。しかし、いざ過去問を目の前にしてみると、解答をひとつひとつ埋めていくだけでも億劫というか。結局スマホに気を取られて、何にも捗りやしません。

脇道に逸れてネットサーフィンしていますと、どんどん先が真っ暗になっていくのを肌で感じられます。この業種はもれなく激務だ、とか、この資格なしではまず内定できない、とか。すぐそこの院試の準備すらできていない男が、資格の勉強やブラック企業勤務に耐えられると思ってるのか?

そうこうするうちに夕方になってきました。相変わらず過去問の解答作りは散々です。まずもってペースが遅く、近いうちに終わる見込みがない。そして、持ち合わせの何年分かで出題傾向が全く安定せず、仮にいくら反復したとしても本番の得点はまるっきり期待できない。

何より、これまでの期末テストで俺は何をしてきた? 何もせず、勝手に中指を立てて死んでいっただけじゃないか。そんな奴がこの半年で急に、努力スペックを獲得できるわけないだろうが。今日みたいにくよくよだらけているうちに夏が終わって、俺は院試に落ちるんだよ。

暗澹たる気持ち。人のいなくなったラボでひとり、せわしなく多動して、ぎゅっと目を瞑ります。なんだ? 今年こそは真面目にと思っていたのは、幻だったのか? 誰か助けてくれ、無能な俺を救ってくれ……。

ついに耐えられなくなって、予定より早めにラボを出ました。誰に挨拶するでも、励まされるでもなく、ひとりリュックを背負って、暮れゆく街を黙って歩きます。

 

家に帰ってくるまでの道中、長い電車区間でずっと、私は記事を読んでいました。

omocoro.jp

こんな感じの、料理系特集を延々と。

オモコロはかなり好きなメディアです。重圧に切羽詰まったテスト前夜、ふとオモコロのことを思い出して、必死に読み耽ったり。そんなことが、毎度のようにあります。才能溢れるライターの秀逸なネタに笑いながら、訪れる明日に泣いています。

今日もつまんない勉強からの逃避行動として、一日中オモコロに逃げていたところでした。そして特急に揺られながら、料理の話を読んで腹が減ったので、今夜はこの記事を真似して晩飯だけでも華やかにしようと思い立ったわけです。

 

 

低音でグツグツやったオリーブオイルに、塩とニンニクを適当にぶち込んで、これまた適当にエビを炒めます。材料の情報だけ拾ってきて、作り方は全く調べていないので。味付けが上手くいっていれば、さぞかしビールに合うことでしょう。ちなみに調理中は本当にびっくりするぐらい油が跳ねて壁がべとべとになるので覚悟が必要です。

ぐつぐつやること数分、果たして出来上がった味、辿り着いた結論は……。俺、イタリア人にはなれねえわってことでした。オイリーで胃にもたれるばっかりで、全然やみつきにならない。多めに作ってしまった分を流し込むようにビールを飲みましたが、てんで楽しくはなく、これを書いている今もまだ缶の半分くらいが残っています。アヒージョなんて、たまにサイゼに行ったときにちょっとつつくくらいで十分だ。

 

優雅になる予定だった夜の時間がまるで盛り上がらず、デカい頭を抱えています。おまけに、睡眠不足のところにビールをぶち込んだもんだから、異様に眠い。キーボードに指を置いたまま眠りかけています。

あ~あ、家に帰ってからも少しだけ過去問やろうと思ってたんだけどな。やっぱりできなかったや、グズだから。努力スペック貧困層。「やらされ」じゃないと何もできない俺は、アカデミアにも社会にも向いてないよ。今年は頑張ろうって思えてたんだけどね、もう、ほんとにね……。

俺はこんなにラボに行ってるぞというポーズだけではなくて、本心から学びたい、励みたいと思えてたらこんなに惨めではなかっただろうに。