150日目 節目は伏し目がちに、思いはただちに

 

かなり現実的な悪夢に襲われて、振り払うようにして目を覚まします。時計を見ると夜の8時。

暖かいような寒いような、やっぱりちょっと寒いような部屋。暖房直下の床に寝ていたせいで、体の奥底までカラカラに渇いています。んだども、臓器・四肢各位が重くて重くて、ペットボトルを取りに起き上がる気にもなれない。しばらく金縛りに魘されたのち、ようやっとスマホに手を伸ばしました。

 

ややあって、なんとか地べたから這い出て、何か食えるものはないかと箱の中をごそごそしました。

「物を食おうと思えるだけ偉いよ」なんて、何の慰めにもなりゃしません。私のような過食気味の脂肪カスからすれば、拒食気味の人こそ「やけ食いしないのは立派だね」って話なんですから。

……とまあつまらん主張は置いといて、食いもんを私は探していたわけですが、残念なことになんにも見つからない。いや、なんぼでも麺とか粉とかはあるんだけれど、手間をかけずに即座に本番行為に入れるヤツがいないんです。ちょいっと小鍋を洗いさえすればいいんだろうけど、今はそれすらも億劫でして。

結局、部屋の隅っこでいじけていたミスターイトウのクッキーを食べました。何の面白味もない、普通のパサパサのクッキー。なんとなく2枚を口にして、なんとなく諦めて、なんとなく食べかけのまま放置して、ぼんやりとしています。

 

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ゲスの極み乙女。のプレイリストを聴きながら、だらだらと部屋の片づけをしています。

 

「退廃的ながらもしっかり大学生活に取り組んでいる」タイプの学生像を描いていた、学部1回生の頃の私。たった2人しかいない製図室で、軽い談笑を交えつつ、徹夜でこりこりと線を引く、そんなカッコいい夜もありました。

この頃に聴き始めたのが「オトナチック」や「ロマンスがありあまる」だったかしら、違ったかしら。繊細で美しいロックは、これ以上なく素敵な作業のお供でした。

 

プレイリストはあくまでランダムに、いろいろな時期のゲスの極み乙女。を流していきます。

 

「ラスカ」や「猟奇的なキスを私にして」に触れたのは、2回生の春でした。この頃からいよいよ私は、憧れるだけの段階を過ぎて、リアルに退廃的な生活へと堕ちていきます。「退廃」なんてイカした言葉を使うのも烏滸がましい。要は、何にもスキルを身に着けることのない、ただの穀つぶしです。

全てがオンラインで完結する時代になったのをいいことに、ひたすら下宿に籠りました(たぶん)。サークルなんかとっくにやめちゃって、私の人間性はきわめて排他的なものへと変貌していきました(たぶん)。たぶん、というのは、この時期のことをほとんど何も覚えていないからです。

 

「私以外私じゃないの」を聴けば、1回生の秋を思い出し。「デジタルモグラ」が流れれば、2回生になってからの虚ろさを想う―—。

感情の海に漂っている3回生の冬の私は、もはや元の生活へと戻る足掛かりを完全に失っています。たまにはあれやこれやと騒いだり、明るく振舞ったりもするけれど、次の日には必ず暗い井戸の底へと戻ってきてしまう。リア友やFFら、どこか遠いところに生きている人々に日々励まされながら、来る4回生の春(ひいては未来のすべて)を恐れて震えている。

そんな冬の夜を過ごす私にとって、過去の記憶を漂わせる曲に身を預ける時間は、心地よくも切ないひとときなのでした。

 

……しかしまあ、同じアーティストの曲を聴いていても、やっぱり暗い曲の方が沁み込んでくるなあ。

明るい曲を聴いたときはそれ相応に「希望に満ちているなあ」と感じ入るけれど、そこから自分自身も前向きになれたことはない。でも、暗い曲——特に、歌詞は苦しいけれど曲調はなんとか明るく振舞っている歌――にはなんだか共感してしまって、感情がぐいぐいとそっちに引っ張られてしまう。それが気持ちよくもあるのだけれど。

まあ、結局はYOASOBIやずとまよと似たようなもんで、大きく「最近の若者の流行り」としてまとめられてしまうのかもしれない。ちょっと、悔しいね。

 

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なんだろう、今晩のこの寂しさは。

 

ちょっと整理してみるか。

まず、一番しんどいのはバイトのこと。どうも、例の「出張」が想定外の頻度で押し寄せてくるっぽいのです。こないだ書いた日記では「次の出張は前向きに挑みます」的な締め方をしたけれど、やっぱり怖いものは怖いや。

これに限らず、バイトに関してはいろいろな大小の懊悩がある。いや、基本の業務内容自体は割と性に合っているし、今すぐにでもやめてしまいたいって訳ではないんだよ(何よりお金が欲しいし)。でも、とかく労働というものには、人間関係とかお金のこととか、ストレスの引き金がたくさんあるんだよね。皆も一緒なのかな。

 

次にやってくる心配は、大学のこと。……いやあ、漠然としているなあ。

今期の単位取得はいつにもまして危うい。学年が上がるほど講義の内容が難しくなってきているのだけれど、例によって自学が乏しすぎて、今月末の試験に受かるとは到底思えない状況です。自業自得? そんなの分かり切っています。分かったうえで、でも、嘆かせてほしい。キツイっす。

そして、これはさっきも触れたけれど、今年の春からは研究室生活が始まります。けれど、そもそもどんな研究室があって、どこに行けば生きられるのかがわからない(自分の専門そのものが完全に嫌いになってしまったので、見学に行きたい研究室もない)。そして、配属が決まったところでその研究室に必要な知識はこれっぽっちも備えていない(マトモに勉強した講義がないから)。

 

他のしんどいことは……例えば、いつの日か完全なぼっちになってしまったときに、果たして自分はどうなってしまうのだろうという心配とか……?

いやあ、やめよう。もう今夜は掘り下げたくない。

 

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ともかく今日の俺はダメだ。というか、少なくともこれから数ヶ月の間はずっとダメだろう。そりゃあ、もちろん楽しくツイートしたり、元気にお出かけしたりするときもあると思う(貯めた旅費で各地の知り合いに会いに行きたい)。けれど、明るい時間が過ぎて一人きりになったら、発作のように胸の奥の不安を思い出しては、今日のような苦しい文章を新規に垂れ流すに違いない。

 

……な~んてカッコつけながら、イイ感じの締めの言葉を考えていたら、リア友のグループLINEに変な動画が流れてきてちょっと笑っちゃったよ。

地元に帰省しているメンツで飲み会をしたらしくて、その帰り道で撮ったっぽい動画。なんかね、真っ暗な河川敷ででんぐり返ししてんの。完全にキマってるわ。

でんぐり返しする彼の周りで、やんやの喝采を送る仲間たち。彼らも一人きりの時間には、きっと何かを悩んで、孤独に苛まれているだろう。でも、皆で一緒に飲んで河川敷で大笑いをしている今は、孤独なんて感じちゃいなさそうだ。そして、この動画を見た俺も、一瞬だけ孤独を忘れて「最高の変人たちよ!」と嬉しくなっちゃった。

 

日記を書き始めてから二時間余り。日の回る瞬間が、もうすぐそこに迫っている。あれこれせっせと練り上げても仕方がないから、このへんで切り上げて文を締めくくることにするよ。

届いたっきり放置していた年賀状のお返しでも書こうかな。全部書きあがったら、投函ついでに、セブンにでも行こうか。