136日目 金を巡る懊悩


(注・誰かと揉めているわけではありません。一人でしょげているだけです)


おかしい。ネットで見た情報と違う。

手元の給与明細によると、どうやら所得税が徴収されているらしい。余裕で控除の範囲内に収まる、小さな額しか稼いでいないのに。


バイト中のちょっと空いた時間に、店のパソコンであれこれと調べてみる。どうやらナントカ控除を申請していないと、少額でも源泉徴収が行われるらしい。

いや、そのナントカ控除というものを俺は知らない。雇い主からも説明はなかった。

ともあれ文句を言っても仕方がない。こうなったら自分で確定申告するしかないから、徴収票を発行してもらおう。


店長に問い合わせると(ワンオペなので直接会うことは無い)、そんな書類は配ってない、というような気の抜けた回答が返ってきた。法律で定められた文書を配ってない、そんなことがあるだろうか。

強めに追及したくなったが、なんとか気持ちを抑え込んだ。店長だって雇われの歯車でしかないのだ。無闇に困らせるのは得策では無い。


いろいろ調べたり、問い合わせたりするうちに、自分のことが嫌になってきた。確定申告なんてまだまだ先のことなのに、何をせっついているのか。

他のバイト生はせいぜい「税金高ぇ〜、チェッ」と言うくらいで、誰も細かいことなんて気にしちゃいない。俺一人だけがネチネチと店長の手を煩わせているのだ。側から見てこんなにめんどくさいバイト生もいないだろう。


身に覚えのない徴収に対する不信感。制度がよくわからないことへの焦りと、問い合わせがスムーズにいかない苛立ち。そして、クッソダルい性格の自分自身への嫌悪感。

いろいろの負の感情が綯交ぜになって神経をすり減らしていく。こんな日に限って、退勤間際に大量の客が押し寄せて、軽いパニックが形成される。


そして、全てが嫌になりました。


誰が正しいとか、何が理不尽とか、もはやどうだっていい。

今はとにかく、金にまつわる、生にまつわる全てが嫌。